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エイトライナー・メトロセブン

 長らくほったらかしの感があるこのテーマ、計画自体が実はまだ構想段階を抜けておらず、どのような体系でまとめるか迷っていた部分があって、公開がいまになってしまった。

 追々、調べた情報等を組み込んで、徐々に調べていきたいと思うので、未完成の状態であることをお詫びしつつ、筆を進めていきたい。

 さて、このエイトライナー・メトロセブンは2000年1月に運輸大臣(当時)に答申された運輸政策審議会答申18号では「区部周辺部環状公共交通」といっている。
 この構想は古く、昭和61年5月に大田区・世田谷区・杉並区が「新交通システム等研究会」を発足させたのが始まりで、「エイトライナー」は大田区・世田谷区・杉並区・練馬区・板橋区・北区の、主に城西・城南地区の区にまたがる環状8号線に沿った公共交通機関を、また一方、城東地区の江戸川区・葛飾区・足立区の、環状7号線に沿った公共交通機関を求めている運動である。なお、23区西部地域の環状7号線直下には、神田川の水害防止のため地下調節池(杉並区和泉1丁目〜中野区野方5丁目)があり、現在のところ環状8号線のような運動には至っていない。

 先に紹介した運輸政策審議会答申18号とは、「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画」と言われるもので、目標を2015年とし、東京の地下鉄計画はもとより、通勤の混雑緩和、住宅開発に伴う新規路線整備のあり方を審議し、必要な路線をピックアップして運輸大臣(国土交通大臣)に答申する長期計画のようなものである。この答申に基づいて、運輸大臣(国土交通大臣)は、他の省庁と協議するなどし必要な法整備を図ったり、実現に向けた環境整備を整えることになる。あくまでも指針のようなもので、法的な強制力を持っているわけではない。

 この「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画」は、過去にも同じような答申が何度か行われていて、昭和60年(1985年)には目標年次を昭和75年(2000年)とする、運輸政策審議会答申13号というのが出されている。このときはマイホームの価格高騰によりベッドタウンの外延化、長距離通勤などがクローズアップされ、この答申を受けて、大規模な設備投資を行うための資金的な支援を行うための「特定都市鉄道整備特別措置法(=運賃に前もって工事費積み立て分の加算を認めた)」などの措置がとられている。

 さて、話を元に戻して、この間の沿線各区の運動はほぼ、この「運輸政策審議会の答申」にこのエイトライナー・メトロセブンを盛り込んでもらうことにもっぱら注力してきたといっても過言ではない。「運輸政策審議会答申」はあくまで長期的視点に立って、その路線の「必要性を認める」「その実現において所轄官庁がバックアップします」ということだけのことであって、国や都がこの路線を造ります、ということを確約するわけではない。「運輸政策審議会答申」に盛り込まれなくても、必要なら鉄道事業は許可されるし、建設も可能である。

 運輸政策審議会が運輸大臣に答申するわけであるので、さかのぼれば運輸大臣が運輸政策審議会に諮問するという手順を踏む。当時の川崎二郎運輸大臣は、1998年11月に「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画」について諮問している。これにターゲットを合わせ、沿線各区の要望を受けた東京都は、この運輸政策審議会に「要望路線」として事業の採算性等についてすでに調査・公表している(詳しくは後日)。これを受けた運輸政策審議会は最終的に上記のように、2000年1月に「区部周辺部環状公共交通」としてこの路線を盛り込んだ、というのが概略となる。

 では、この答申を抜粋して実際に見てみたい.。

<21>区部周辺部環状公共交通(仮称)の新設

 葛西臨海公園・・・赤羽・・・田園調布・・・→羽田空港方面

・羽田空港方面の扱いについては京浜急行電鉄空港線と東京急行電鉄目蒲線を短絡する路線の整備状況をふまえて検討する。

・長大路線であり、今後の輸送需要等を踏まえて、早期に優先着工区間を決定する。

 

 答申路線の表示に係わる凡例

                                         新設   複々線化
 ○目標年次までに整備を推進すべき路線(A)
  ・目標年次までに開業することが適当である路線(A1)              ■    =
  ・目標年次までに整備着手することが適当である路線(A2)            −    ==
 ○今後整備について検討すべき路線(B)                      ・・・  :::
  また、今後整備について検討すべき方向を示す場合は「・・・→」とする。

 

 とりあえず、答申に盛り込まれたには盛り込まれたが、逆に、沿線各区には厳しい結果となってしまった。「凡例」で見てもわかるとおり、必要性については最低ランクの「B」であり、2015年まで着工しないでも仕方がない、ということを逆に答申に盛り込まれてしまったのである。さらに、田園調布より大田区側は、整備の必要性すら早期に決定する必要はない、「京浜急行電鉄空港線と東京急行電鉄目蒲線を短絡する路線=蒲蒲連絡線」の整備状況をみてから、という足かせまでつけられてしまった。非常に悲観的な内容である。盛り込まれないよりはましだが、実現に近づいたとはとうてい言えるものではない。

 

 これについては、やはり「陳情運動」の限界性が現れているような気がしてならない。

 まず、第一に、資金計画が不明確であること。「エイトライナー」のパンフレットを実際に見てみると「エイトライナーが完成すると、1日当り71万人の利用が見込まれます」となっている。諮問前の東京都の試算では、地下鉄方式での建設が考えられているが、エイトライナー部分だけで43km、メトロセブン部分も含めると70km超の地下鉄を建設する資金はどこから調達してくるのか。
 大江戸線の環状部(新宿−都庁前:約40km)に約1兆円の建設費がかかっている。公共の地下鉄建設には、財政投融資他の財源をもとに、国や地方自治体から地下鉄建設補助が出るが、民間の鉄道では補助は出ない。民間向けには鉄建公団P線方式というのもあるが、これは利子の補助のみであって、自力償還を原則としている。しかし利用が見込みより低ければ、利子さえも払えず債務超過で経営破綻した「千葉急行電鉄」のような事例もあることを考えると、現行の法的枠組みでこの計画をそのまま実施するということはまず不可能といっていい。
 さらに、「答申」では田園調布より東側の建設が事実上棚上げされているが、このことは逆に、車両基地を地価の安い埋め立て地に置くことができないということであり、さらに用地取得費の高騰を招いて事業費の増大を招く要因ともなることを指摘しておきたい。

 第二に、需要見込みが過大であること。先頃開通した都心部を走る大江戸線がまだ50万人そこそこというのに、エイトライナーが71万人などなにをかいわんやである。失礼ながらこれはもう“お笑い”の域である。もちろん輸送需要には「羽田空港」や「環8からの自動車からの転移」という特殊要因があったとしても、羽田空港の東京モノレール・京浜急行の乗降人員の合計が13万人程度であることを考えれば、すべてエイトライナーに転移しても10万人単位でエイトライナーの利用が増えるとは見込みにくい。需要の多いといわれるエイトライナー側でさえこの有様であり、羽田空港の要因がないメトロセブン側は需要はもっと厳しいといわざるを得ない。

 

 とここまで書くと、私はエイトライナー・メトロセブンの妨害者みたいに捉えられてしまうが、決してそうではない。あったら便利であるということは間違いない。ただ、その実現に向けての具体的な詰めがなされていないように感じられる。簡単に言ってしまえば素人が考えた構想からまだ脱しきれていないというのが実情である。

 では、建設費の低減に向けた提言であるが,ズバリ「新交通システム」を採用するほかない。

 「新交通システム」とは、ゆりかもめなどにみられる軌道上をゴムタイヤで走行し、車両を連結して走る中量輸送機関のことである。現在、ゆりかもめの有明−豊洲間延伸工事が行われているほか、日暮里から見沼代親水公園まで建設中の「舎人新線」にも採用されている。

線 名 形態 区 間 距離 所要時間 速度 事業費 輸送実績(1日当り)
ゆりかもめ 新交通システム 6両 新橋−有明 12.1km 24分 30.2km/h 1,702億円 約10万人(H11)
有明−豊洲 2.8km 502億円 未開業
多摩都市モノレール モノレール 4両 多摩センター−上北台 16.0km 36分 26.6km/h 2,420億円 約11万人(H14)
舎人新線 新交通システム 日暮里−見沼代親水公園 9.7km 20分 29.1km/h 1,548億円 未開業
都営大江戸線
(環状部)
鉄道(小型地下鉄) 8両 都庁前−新宿 28.6km 57分 42.8km/h 9,886億円 約51万人(H13)
埼玉高速鉄道 鉄道(一般地下鉄) 6両 赤羽岩淵−浦和美園 14.6km 19分 46.1km/h 2,996億円 約5万人(H13)

(青字は計画)

 新交通システム方式であるゆりかもめと大江戸線のキロ当り事業費を比べてみれば、大江戸線の346億円、埼玉高速鉄道の205億円に対し、ゆりかもめは140億円であり、大江戸線の約40%の事業費で建設することが出来る。もちろん輸送できる人員には違いがあるが、そのいずれも満員で走っているわけではないので、幾分かはまだ余裕があるはずである。地下鉄方式と新交通システムで差がつくのは速度で、さすがに地下鉄はそれなりの速度が出る。しかし、エイトライナー・メトロセブンは、もともとなぜ建設するのか? 地域輸送主体なのか、羽田空港輸送主体なのかを考えれば、自ずと選択すべき方式は見えてくるはずである。

 あともう一点は、事業の見込みがたたない田園調布以東の計画を放棄し、蒲蒲連絡線の実現に集中することである。この区間は、東急多摩川線と京急空港線が環状8号線と並行しており、事業の必要性が感じられない。それが「答申」で、田園調布以東が事実上棚上げされてしまった原因に他ならない。であれば、JR蒲田と京急空港線を連絡する蒲蒲連絡線をまずは実現させ、大田区の東西連絡を果たしその事業を成功させるのが、とくに大田区地域の発展につながるのではないか。

 いずれにしろ、資金計画と需要予測をもっと具体的にかつ実現可能な形態で提示しないことには、いつまでも前進しないことは明らかであり、まずそれらの練り直しからスタートするべきであろう。

エイトライナー公式ページ(エイトライナー促進協議会)

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